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【イベント報告】ゲスト:亀石倫子さん/第21回コレクティブインパクト勉強会が開催されました
2025年6月12日、第21回コレクティブインパクト勉強会が開催されました。今回のテーマは「変えられないを変える ── 公共訴訟で未来を創る」。ゲストは、法律事務所エクラうめだ代表弁護士であり、一般社団法人LEDGEの代表理事でもある亀石倫子さんです。
亀石さんが語ったのは、司法がいかにして社会制度を変革し、私たちの暮らしに影響を与えるかという、迫力と熱意に満ちたストーリー。開催後の参加者アンケートでも「希望をもらった」「目を開かされた」「全ての人に聞いてほしい話だった」というコメントが寄せられた、とても熱い回となりました。
北海道・小樽市で生まれ、大学卒業後、大手企業に就職した亀石さん。安定した職場に勤めながらも、「組織に馴染めない違和感」を抱え続けていたといいます。結婚を機に大阪へ転居し、キャリアをリセットしたいと考えていたある日、ふと目に留まった司法試験予備校のパンフレット。
「寝る時間以外の自分のすべての時間を勉強にかけたら、合格するんじゃないか」
全く縁のなかった法律の世界に飛び込み、7年間の試験勉強を経て司法試験に合格。大阪市立大学ロースクール(現・大阪公立大学法科大学院)を経て、新たな人生を切り拓きました。

そんな亀石さんが刑事弁護の道を選んだきっかけは、ロースクールで出会った刑事訴訟法の講師が、あの「和歌山カレー事件」で被告人・林眞須美氏の弁護を担当した人物だったことにさかのぼります。
「正直、“どうしてあんな人を弁護できるんだろう?”って思ったんです。でも先生の話を聞くと、事件の見え方が全然違っていた」
マスコミの報道によって、刷り込まれていた偏見。間接証拠しかない状況で有罪が導かれていた現実。弁護人の視点から事件を見直したとき、「自分は差別や偏見と無縁だと思っていたけれど、まったくそうじゃなかった」と気づかされたそうです。
「もし弁護士になれたら、刑事弁護をやろう」。その決意のもと、亀石さんは刑事事件を専門とする法律事務所に所属し、多くの重大事件と向き合うキャリアを歩み始めました。

2012年、大阪で、音楽好きが集まるクラブが突然次々に摘発される事件が起きました。この時使われたのは、昭和23年にできた風営法の条文でした。戦後まもなくに制定された法律が、70年以上経った現代で、若者文化を取り締まるために恣意的に解釈され、使われていたのです。さらに、その解釈がまかり通ってしまうと、日本全国のありとあらゆるクラブが営業できなくなるというものでした。
まずは、クラブの経営者や、クラブで働いている人、クラブでDJをしたり、遊びに来ているお客さんなど、当事者の話を聞いていったという亀石さん。
「そこには私たちと同じ市井の人々の生活があり、生きがいとかやりがいがあり、それを生活の糧にしている人たちの働く場所があるということが、リアルにわかったんです」
さらに、クラブカルチャーは、いろんな文化が融合して、新しい文化を生み出すという大切な機能がある場所。そんな場所が、条文の恣意的な解釈によって奪われるということのひどさ、失われるものの大きさを痛感したといいます。
それは、表現の自由や、職業選択の自由に関わる「憲法問題」です。亀石さんたち弁護団は、裁判でも憲法上の主張をし、最終的に無罪判決を勝ち取り、風営法の改正につながりました。
この「公共訴訟」と呼ばれる手法では、一つの裁判が単なる個人の救済にとどまらず、法律や制度そのものを変え、全国民に影響を与える可能性を持ちます。裁判は2年に及び、証人や研究者、当事者たちとともに闘い抜いた経験は、亀石さんにとっても転機となりました。
次に紹介されたのは、タトゥー施術者(彫り師)が医師免許を持たないことを理由に摘発された「タトゥー訴訟」。この事件では、健康被害の実例がないにもかかわらず、医師法の解釈を拡大しての取り締まりが行われていました。
「職業選択の自由」に関わる問題として争ったこの裁判で、控訴審を迎えたとき、弁護団は資金が底を尽きてしまいます。そこで日本で初めて、訴訟費用をクラウドファンディングで集めるという試みがなされました。支援者からの応援で集まった約338万円により、逆転無罪を勝ち取ることに成功。現在、厚生労働省では彫り師の業界団体への聞き取りを通じて、新たなガイドラインの策定を模索しているようです。
後半の質疑応答では、参加者からの率直な質問が続き、会場全体が一層引き込まれていきました。
「福祉の領域に携わる者として、私たちにはどんなアクションがあるか」という質問には、「逆に私が皆さんの活動とかを教えてもらったり、その現場を訪れたりして、例えば日々こういうことしてて、こういう問題あるんですって聞いたりするのが一番良いんです」という亀石さん。
実際に、障がいのある方が多数活躍されている企業を見学し、その困りごとから法律を調べるなどのリサーチをされているそうです。さらにこの日も、勉強会に参加していた複数の方の困りごとに熱心に耳を傾けていらっしゃいました。

<グループディスカッションも大いに盛り上がりました>
亀石さんは2023年、日本初の公共訴訟専門集団「LEDGE(レッジ)」を立ち上げました。憲法違反や法制度の不合理に対し、リサーチャー、キャンペーナー、弁護士らがチームを組み、訴訟を通じて社会課題を可視化・改善することを目指しています。
現在までに、選挙年齢の改正、外国人風の見た目による職務質問の差別是正、不妊手術を原則禁止とする母体保護法の見直しなど、8件の公共訴訟をサポート。5年で30件の訴訟を行うことを目標としています。
公共訴訟は、基本的に国や自治体を相手取るため、公的な助成や委託は受けられません。LEDGEの活動は、寄付によって支えられています。
▼LEDGEへの寄付・活動紹介はこちら
https://ledge.or.jp/
「どうせ変わらない」──そうした思い込みに抗うのが、司法の力であり、公共訴訟です。 今回の勉強会は、制度を変えることの難しさを学ぶ場であると同時に、「変えようとする人の姿勢」が社会を動かしていくという事実を、多くの人に伝えた機会となりました。 司法は誰かの特権ではなく、私たち一人ひとりの手にある。そう感じさせてくれた一日でした。

次回も、みなさんと新たな出会いと学びを共有できることを楽しみにしています!
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