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2023/9/20

母子×アフォーダブルハウジングの海外事例を知る (イギリス・オーストラリア編)

前回の記事では、アメリカにおけるシングルマザーの支援団体を紹介しましたが、今回はアメリカ同様にシングルマザーが多くの課題に直面しているイギリス、オーストラリアで活動する支援団体を紹介したいと思います。

アフォーダブルハウジングを自ら提供する団体から、住まいやその周りの生活全般に目を向ける団体まで、幅広に紹介します。

シングルマザー世帯とアフォーダブルハウジングの実態

イギリス

イギリスの国勢調査によれば、2022年にはひとり親世帯が全世帯の15.4%を占め、未成年の子どもがいる母子家庭が160万世帯を上回りました[1]。また、2019年時点では、ひとり親世帯の子どもの49%が相対的貧困に陥っていて、近年の生活コストの上昇による影響を大きく受けていることが分かります[2]。

他方、イギリスは公営住宅の供給不足や民間賃貸の家賃上昇などの深刻な問題に直面していて、多くの低所得者が家賃の支払いに苦労し、劣悪な環境の住宅に住まざるを得ない状況に置かれています。

そのため、政府は2021年から2026年で18万戸の中低所得者向け住居を新たに提供する政策[3]を打ち出していますが、それでもひとり親世帯をはじめとする中低所得者の需要には追い付かないといわれています。

オーストラリア

オーストラリアもイギリス同様に多くのシングルマザーが生活に困窮しています。オーストラリアの国勢調査によれば、2021年に初めてひとり親世帯が100万世帯を上回り、そのうち88万世帯が母子家庭[4]でした。また、2020年時点では、ひとり親世帯の34%が貧困状態にあり、ひとり親世帯の子どもは二人親世帯の子どもに比べて貧困に陥る割合が3倍以上高いことが分かっています[5]。

その上、オーストラリアはOECD諸国と比べて全住宅に占める公営住宅の割合が4.2%と低く、アフォーダブルハウジング不足に悩まされています[6]。このことにより、家庭内暴力に悩む女性(シングルマザー含む)が加害者と別の住まいを確保することができず、年間9000人がホームレス状態に陥っているという試算も出ています[7]。

そのため、2023年には、政府が住宅整備に関する10か年計画を策定し、5年間でアフォーダブルハウジングを3万戸増やすことを発表しました[8]。

シングルマザーに対する支援団体

各国のこのような状況を受け、数多くの支援団体が活動しています。この記事では、イギリスとオーストラリアからは、アフォーダブルハウジングを提供する団体とシングルマザー家庭を支援するコミュニティ作りに取り組む団体をそれぞれ1つずつ紹介します。

Homes For Good

~スコットランド初のアフォーダブルハウジングに特化したソーシャルビジネス~

まずは紹介するのは、スコットランドの不動産会社として初めて低所得者向けの住宅に特化したソーシャルビジネスを展開するHomes for Goodです。

グラスゴーを拠点にスコットランド西部で活動している会社で、空き家や劣悪な状態の家を取得し、リノベーションすることで、低所得者に低価で高品質な家を提供しています。また、物件の購入とリノベーションに留まらず、不動産の賃貸仲介、住居人の支援、物件の管理・修繕も手掛け、家と住人の両方に長期的に関与するビジネスモデルを採用しています。住人向けサービスとしては、家計の見直しや補助金申請等を支援するアドバイザーや住環境を改善するためのインテリアデザイナーを派遣するほか、見守りサービス、健康アドバイス、職業訓練等の幅広いサービスを、地域団体と連携しながら提供しています。このように、生活のコストと質の両方を改善する手助けをすることで、借主の90%が生活賃金未満の収入しか得ていないにもかかわらず、家賃の滞納率を2%程度に抑えることに成功し、低所得者の新たな住まいの選択肢として根付き始めています。

会社の創設以降、2,000万£(約36億円)の投資を集めていて、今では500件以上の物件を管理するまでに成長しました。Homes for Goodはアフォーダブルハウジングとビジネスを両立させた好事例として、World Habitat(国連ハビタットのパートナー団体)が実施する表彰制度の最優秀賞(2023年)にも選ばれています。

Faith Works (Faithworks - Getting people out of crisis and isolation in Dorset. (faith-works.org.uk))

~ひとり親のコミュニティを広げるイギリスの支援団体~

次に紹介するのは、イギリスで貧困やホームレス、ひとり親など、あらゆる理由で社会的に孤立してしまいがちな個人を支援するFaith Worksです。

イギリス南部のドーセット州に複数の拠点を構えていて、フードバンクやシェルターへの紹介等の緊急的な支援から地域住民とのつながり創出や支援ネットワークの構築等の将来を見据えた支援まで幅広く提供しています。

Faith Worksが手掛ける数多くの活動のうち一つが、ひとり親同士が交流し、助け合えるコミュニティの創出に取り組むSMILE事業です。SMILE事業は、ひとり親同士で交流するSMILE VIP、地域住民との交流イベントのSMILE PLUS、カウンセラーや日頃の悩みの相談相手を探すことができるオンラインコミュニティのSMILE Connectの三本柱で成り立っています。特にSMILE PLUSの活動を実施するに当たっては多くの地域団体と連携していて、家庭菜園クラスやセルフ・アウェアネスのワークショップ等、シングルマザーたちのニーズと地域団体のリソースを上手く組み合わせ、多種多様な取組を展開しています。

SMILE事業を始めとするFaith Worksの活動は、地域の人々を支える活動としてテレビで取り上げられたり、地域のチャリティイベントや企業から寄付先として選ばれたり、地元から根強く支持されています。

Mission Australia (Home | Mission Australia)

~教会のネットワークを活用して全豪にアフォーダブルハウジングを提供~

オーストラリアから紹介するのは、教会ネットワークを活用してオーストラリア全土でアフォーダブルハウジングを提供しているMission Australiaです。

オーストラリア各地の教会で行われていた慈善活動が束ねる形で創設されたMission Australiaは、オーストラリアでホームレス状態に陥ってしまう人をなくすために、約2,000件のアフォーダブルハウジングを提供しています。また、本人が抱える生活上のあらゆる問題を解決するため、医療ケアやカウンセリング、障がい者支援や高齢者サポート等、一人一人の抱える課題に寄り添うための多様なプログラムを用意しています。

シングルマザーに対しては、経済的自立を応援するために、キャリアプランの計画や企業とのマッチングを支援するParentsNextプログラムを実施しています。また、シングルマザー家庭等の子どもが家族と良好な関係を保ち、心身健康でいられるよう、子どもに対するカウンセリングや親に対する育児教室等も開催しています。さらに、各プログラムを通じて社会的弱者の声を拾い上げ、国会等に対する要望や政策提言を提出するなど、ホームレス問題に関する啓発活動にも力を入れています。

近年も各地に新拠点を開設して精力的に活動範囲を広げるなど、オーストラリア最大級の支援団体として活躍し続けています。

Friends With Dignity

~オーストラリアで家庭内暴力に苦しむシングルマザー家庭に安全と安心を提供~

次に紹介するのは、オーストラリアで家庭内暴力に苦しむシングルマザーやその子どもたちを対象とした支援団体Friends With Dignityです。

Friends With Dignityはシングルマザー家庭が自尊心を持って新しい生活を始められるよう、必要な物品の提供、安心して暮らせる環境の整備、地域住民を巻きこんだコミュニティ作り等、多面的なアプローチを取っています。

その中でも最も活用されているのが、家財道具や日用品の寄付を募って新居に届けるSanctuariesプログラムや危険を感じた時に警察等にすぐ連絡できるスマートウォッチを貸与するFriendsafe プログラムです。また、子どもたちが進学したり、課外活動に取り組んだりするための奨学金も用意していて、子どもが学ぶことを諦めなくていい環境づくりにも取り組んでいます。

この団体の特徴は、地域の住民やボランティアを担い手としている点と各種支援団体との連携をしている点です。地域の住民を巻き込みながら活動することで、コミュニティ起点の支援ネットワークを構築するとともに、家庭内暴力の実態や被害者への影響等を世間に発信しています。また、地域の支援団体や不動産会社等と連携することによって、支援を必要としているシングルマザー家庭にすぐ声をかけ、新居を提供できる体制を整えています。

Friends With Dignityは、2018年と2020年に、オーストラリア国内で成果を出しているチャリティ団体に贈られるThe Australian Charity Awardsを受賞するなど、注目を浴びている団体です。

 

終わりに

この記事ではイギリス、オーストラリアで活動する団体や実施されたプログラムについて紹介しました。

それぞれの国におけるアフォーダブルハウジングやシングルマザーに対する政策の方向性や熟度に差があるため、各団体の活動内容も自ずと異なりますが、すべての団体に共通するのは、他団体と連携することでより効果的な解決策を提供しているという点です。

シングルマザーが抱える課題は複数の分野にまたがること、また、ホームレスや難民などの状況に置かれている人々と通ずるものがあります。そのため、それぞれの団体が個々に取り組むのではなく、連携することで、より効果的な解決策を生み出し、より広域的に、またはより持続的に支援をすることができます。

このような連携を増やすことで、地域の中に支援コミュニティを生み出し、より多くのシングルマザーが支援を受けられる環境を整備しています。



[1] Families and households - Office for National Statistics (ons.gov.uk)

[2] Pre-pandemic relative poverty rate for children of lone parents almost double that for children living with two parents | Institute for Fiscal Studies (ifs.org.uk)

[3] What is affordable housing? - House of Commons Library (parliament.uk)

[4] Labour Force Status of Families, June 2021 | Australian Bureau of Statistics (abs.gov.au)

[5] Poverty in Australia 2023: Who is affected – Poverty and Inequality (acoss.org.au)

[6] EEWomen+HousingDomestic+ViolenceWEBSINGLES.pdf (squarespace.com)

[7] EEWomen+HousingDomestic+ViolenceWEBSINGLES.pdf (squarespace.com)

[8] National Housing and Homelessness Plan | Department of Social Services, Australian Government (dss.gov.au)

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